はじめに
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はじめに

「画楽」という旅

 アートセンター画楽には、主に発達障害のある人たちが通ってきます。
 わたしたちは元々十数年前から障害のある人の美術作品を集めた作品展「パラレルアーツフェスティバル」を実施することや、創作活動をワークショップなどで支援する活動を行ってきました。
 はじめは、単純に障害のある人たちの作品発表をし「褒められる機会」を作ることで自信を持つことや、家族、親族あるいは地域社会の中で認められることの一助となればいいなと考えていたのですが、数多くの才能と出会うにつれ、自分の中に「ある疑問」がわき上がってきます。
「自分の心に起こるざわめきを直視しろ」
「君の芸術観はどのように形成されたのですか?」
それらの疑問にある示唆を頂いたのが、ある仕事でインタビューの機会を得た劇団「態変」を主催する金満里氏の一言でした。
「あなた方は健常者文明の中で生きているのよ」
 この衝撃の一言は、その後の画楽の活動に大きな変化を与えました。
彼らのことをもっと知りたい、理解したい。そのことが私がよりよく生きるために必要なのだ。
 幸いなことに、私たちは元来様々なことを楽しむ力を持ち合わせています。私たちの会社は創業の時の基本理念に「愉快製造工場」でありたいと宣言しています。だから、こんな大変な命題も面白がりながら取り組むことが出来ました。
そうはいいながらも、そのころは断続的でイベント的な取り組みでしかありませんでした。
 ちょうど、支援費制度の開始や自立支援法の施行など障害のある人を取り巻く環境が劇的に変化している時期でもあり、彼らの日中活動の場として、毎日出入りすることが出来る場所のひとつとしてアートセンターを開所したい。彼らの創作活動を継続的にサポートしていく仕組みを作りたいという気持ちから、2004年4月に開所し今に至っています。
 今後の課題として現在取り組んでいることは、彼らの作り出す新しい価値を換金する仕組みづくりです。Tシャツをはじめ、ありきたりですがポストカード、そのほか様々な商品へと展開しようとしています。
 ただこれらの取り組みは、一地方都市だけで独立して展開しても、効果を生み出すことが困難です。同じ志を持った仲間と日本中、あるいは世界中で手を組み商品や情報を共有することがブレイクスルーの要件であるように感じます。
 わたしたちにとって説明のつきにくいことや数値化できにくいことこそが愉快の源です。そこに「真理」の種が潜んでいると考えるからです。その宝モノを探すことが「画楽」の旅であり、ゴールのない永遠に楽しめる旅でもあります。
2008年9月
アートセンター画楽 代表 上田祐嗣